摘要
1980 年に入り,わが国でも国外の有償採血で製 造された非加熱血液凝固第VIII 因子の投与を受 けた血友病患者にHIVの感染症例が報告される ようになり,その後「薬害エイズ」として顕在化 した.日本赤十字社(日赤)血液センターでは, 輸血用血液の安全性向上と,国内における自給自 足体制を確立するべく,厚生省の指示のもと,1986 年には 400mL献血,成分献血を導入・推進し,ま た同年 11 月からはHIV-1,HTLV-I の抗体検査を スクリーニング検査として導入した.1995 年には すでに導入していた自己申告制に加え全国統一し た新規の献血者用の問診票を実施し,1996 年 9 月から献血血液の遡及調査のための献血血液検体 の 10 年間保存,さらに血漿分画製剤用の原料血漿 の 6カ月間貯留保管を施行している.また 1999 年 10 月には,さらなる安全性を確保するため,世 界に先駆けHBV,HCV,HIVの 3種類のウイルス を対象に核酸増幅検査(NAT)を行い,NATの結 果が陰性である血液製剤のみを医療機関に供給す ることを実現してきた.そしてNATを導入し て 2年経過した現在,NATは輸血用血液製剤を 含めた全血液製剤の安全性向上に極めて有効な手 段となっているものの,一方においては血液事業 のあり方に大きな変革を求める引き金になりつつ ある.そこで今回わが国におけるNATの現状 と,血液事業に及ぼしている影響について,NAT センター(血液管理センター)の立場および日赤 血液センター(京都府赤十字血液センター)の立 場から検討を加えてみた. NATの導入 1995 年以前から日赤ではHBVや HCV,HIV の感染が疑われた献血者や,輸血を受けた患者を 対象にNATを個別症例別に実施していた.その 頃から輸血用血液のスクリーニング検査として NATの必要性が主に医療機関側から要望されて いたものの,手作業によるNATの実施はまず不 可能と見なされていた.その頃,献血血液から血 総 説