摘要
41K,42Ca両スパイクを併用して,試料溶液中のカリウムとカルシウムとの間に同位体平衡を成立させたのち,必要ならば蒸発濃縮して,同位体希釈質量分析用の試料とする.質量分析計のイオン源として,タンタルシングルフィラメントを用いる.カリウムとカルシウムの1価イオンへのイオン化電圧の差を利用して,具体的には,1価イオンを発生させるに必要なイオン源フィラメントの電流値の差を利用して,同位体イオンピームの強度比すなわちI41K+/I39K+,I42Ca+/I40Ca+を逐次測定することによって,試料中の両成分量を求めた.すでに報告した41K,42Caスパイクをそれぞれ単独に用いての個別法に比べ,質量分析上の感度,精度に劣化は認められなかった.本報では,41K,42Ca両濃縮スパイク溶液中に不純物として含有されるカルシウムとカリウム(1g溶液中,0.0304μgと0.00354μg)が誤差源となる.その誤差は,カリウムとカルシウムそれぞれ0.02~2.04%,0.19~6.41%であった.この誤差は補正が可能であるから,逐次分析法の成立そのものを阻止することはなかった.他の誤差源として41Kスパイクのイオンビームが強大で,そのテーリング現象が40Ca+と42Ca+イオンビームに重複することがあったが,41Kをベーキングして除去することができた.逐次分析法の利点は試料量を節減できることであるが,これを利用して,地球極地雪氷中へのボーリングコアの分析を行ない地球化学上の資料を求めることができた.