Peridinium bipes f. occultatumによる淡水赤潮が西日本の多くの貯水池において発生しており,この原因を本種の生理的特徴から検討した。P.bipesの増殖に関する最適光強度を無菌クローン株を用いた培養試験から求めた。本種の最適光強度は130μEm-2sec-1であり,同属のP.penardiiや淡水産珪藻類に比べて高い光強度に適応した種であった。リン,窒素,カルシウムおよびマグネシウムについて,本種の増殖に最適な濃度を,プルームを形成する同属種や他の植物プランクトンのそれと比較した。P.bipesはこれらの種と比較して低い栄養条件で増殖し得る種類と推定された。この高い光強度と低栄養条件で増殖できるという特徴が,西日本の多くの貯水池においてP.bipesによる赤潮が形成される要因となっていると考えられた。MONODの式に適合させて求めたP.bipesの最大比増殖速度(μmax)と半飽和定数(ks)を同属のP.gatunenseや4種の珪藻の値と比較した。P.bipesの最大比増殖速度(μmax)はこれらの種に比べて低く,半飽和定数(ks)は高いという特徴を持つ種であった。また本種の比増殖速度の最大値は0.171d-1であり,これは既知の植物プランクトンの値に比べて低いものであった。これらの増殖パラメータに関する特徴は,本種が共存する他の植物プランクトンに比べて,増殖において必ずしも有利な種ではないことを示している。