摘要
尿路系疾患を持つ78患者 (分化型膀胱腫瘍17, 未分化型膀胱腫瘍3, TUR-Bt後, 経過観察中の患者24, 前立腺癌13, 良性尿路疾患21) から147尿検体を得, これに対して走査電顕による尿中剥離細胞診 (SEM cytology) を行つた. 即ちまず尿中剥離細胞を, 移行上皮細胞, 末熟な移行上皮細胞, 非定型的移行上皮細胞 (ATC), 扁平上皮表層細胞, 未熟な扁平上皮表層細胞, 非定型的扁平上皮細胞, 表面平滑な細胞, 表面にblebのある細胞の8種類に分類した. 個々の検体で約100個の剥離細胞を走査電顕で観察し, 表面構造の特徴から上記剥離細胞に分類して, 各々のパーセントを求めた. Pleomorphic microvilli を持つATCが3%以上ある時, SEM cytology 陽性とした場合SEM cytology の膀胱腫瘍に対する特異性 (specificity) は89%で, 感受性 (sensitivity) は58%であつた. しかし分化型膀胱腫瘍に限れば, 感受性は71%であつた. 膀胱腫瘍患者で同時に行つたパパニコロー尿細胞診 (LM cytology) とSEM cytology 結果の比較では, LM cytology は未分化型膀胱腫瘍に対して (78%), SEM cytology は分化型腫瘍に対して (77%) 各々感受性が高かつた. TUR-Bt後経過観察中の患者 (22例) のなかで, SEM cytology 陽性者のうち47% (7/15) がSEM cytology 施行後再発をみた. 一方陰性者のうち7.1% (1/14) が再発しており, SEM cytology 陽性者にその後の再発が多い.以上より, SEM cytology は分化型膀胱腫瘍に対する尿細胞診として LM cytology より優れており, 特に分化型膀胱腫瘍術後の再発早期発見の一手段として十分期待されうる.