出处
期刊:Nippon Nōgei Kagakukaishi
[Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry]
日期:1988-01-01
卷期号:62 (6): 965-970
被引量:4
摘要
A. nigerのシュウ酸醗酵機構を調べるために,クエン酸醗酵の培地に供試菌の胞子を接種し,菌体の発育が旺盛になったときに中間代謝産物と考えられる有機酸溶液を増殖培地と交換し,培地中のシュウ酸生成量へ及ぼす影響を検討した.さらに,A. nigerの無細胞抽出液中に,シュウ酸の生成系および分解系酵素の存在を確認した.その結果を以下に,要約した. (1) 予備実験として行った代謝培養のシュウ酸量は,ショ糖量, pHによって大きく差があり, pH6.5に毎日調整した7%ショ糖溶液から多く生成された. (2) TCAサイクルに関連する有機酸であるピルビン酸,クエン酸,グリオキシル酸,オキザロ酢酸を代謝培地の基質としたときに,シュウ酸が生成された. (3) 上記の基質から生成されたシュウ酸量が減少すること,培地中に微量のギ酸が認められること,およびシュウ酸を代謝培地の基質とした場合でもこれが分解されることより, A. nigerにとって,シュウ酸は最終生産物ではないと考えられる. (4) A. nigerの菌体から調製した無細胞抽出液に,オキザロ酢酸からシュウ酸を,グリオキシル酸からシュウ酸を生成する酵素の存在が示された. また,シュウ酸を分解して,ギ酸を生成する脱炭酸酵素の存在も示された. (5) 粗酵素液中の各酵素の至適pHは,生成系酵素は8.0,分解系の酵素は5.0であった. 以上の結果より, A. nigerによるシュウ酸醗酵について,糖がピルビン酸を経て, TCAサイクルに入り,クエン酸,グリオキシル酸およびオキザロ酢酸からシュウ酸が生成されること,およびシュウ酸はギ酸へ分解されることが推察された.また,これらに関与する酵素の存在が認められた. 終わりに,本研究の実施にあたり,堀田美佳,上枝季代,長瀬りえの皆さんのご協力に対し深く感謝いたします.なお研究費の一部は,岐阜女子大学特別研究費によった.